Column 8 荻窪音楽祭
荻窪音楽祭は平日が面白い!
春・秋とも三日間にわたって開催される荻窪音楽祭の初日は必ず金曜日。平日なので他のエリアからの来場者は多くはないものの、“平日ならでは”の会場でのコンサートを楽しむことができます。
それは、杉並保健所や荻窪地域区民センターといった公共施設、りそな銀行や城西病院のロビーなど、土日は定休日となっている施設での無料コンサートです。そういった生活に密着した施設でコンサートを行うことからも、すでに荻窪音楽祭が荻窪周辺に住む人たちの生活に溶け込んでいるイベントであることがうかがえます。
第23回荻窪音楽祭では5月13日の金曜日がそんな“平日ならでは”のコンサートを楽しめる日でした。荻窪タウンセブン屋上では音楽祭のオープニングにふさわしい音楽結婚式も行われ、青空の下、3台のハープとヴァイオリンの生演奏が式を盛り上げていました。
公共施設でのコンサート
荻窪駅の南側にある杉並保健所ロビーでは12時から45分間、撫子コンソートによる「バロックで癒しとくつろぎを」というテーマでの演奏会が実施されました。
5人のリコーダー奏者とバロックチェロの音色で、保健所ロビーは癒しの空間に。ルイエ作曲の「ソナタ ニ短調」をはじめ、モーツァルト作曲の「アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ短調 K.618」、そして「ケンタッキーの我が家」「エーデルワイス」といった多くの人に馴染みのある曲を演奏した後、東日本大震災の復興ソングとして歌われている「上を向いて歩こう」は、撫子コンソート伴奏のもと、会場の人たち全員での合唱となりました。
荻窪地域区民センターでは、13時半から14時半までマチネー・コンサートが行われ、吉崎めぐみさんのクラリネットと茂木摂子さんのピアノ演奏によるロッシーニの「変奏曲」、佐々木梨花さんのヴァイオリンと伊藤明子さんのピアノ演奏によるモーツァルトの「ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.301」の格調高い音色が館内を包みました。
りそな銀行
JR荻窪駅北口駅前を走っている青梅街道沿いにあるりそな銀行の荻窪支店ロビーでも、「ヘルマンハープとソプラノとフルートを楽しむ」というテーマでのコンサートが実施されました。
林智子さんが奏でるヘルマンハープと、長井静さんの澄み渡ったソプラノに聴衆もうっとり。ATMで入出金に訪れたお客様もそのまま足を止めてその歌声に聴き入ってしまうほど。ふと日常を忘れさせてくれるような優雅な時間が、そこにはありました。
城西病院
上荻2丁目にある城西病院では「荻窪音楽祭」の時だけでなく、定期的に院内でホスピタリティコンサートを開催しているため、社団法人衛生文化協会城西病院主催の自主企画として音楽祭に参加しています。
同院にとっては68回目のホスピタリティコンサートで、定員は70名。開場は18時半でしたが、すでにその15分前には20人以上が病院前に列をつくっていたため、整理券が配られるほどの盛況ぶり。
元日本フィルハーモニー交響楽団のメンバー・東京ベートーヴェンカルテットによる弦楽四重奏を19時から21時までの2時間たっぷり聴けるのですから、当然のことと言えるかもしれません。
東京ベートーヴェンカルテットの演奏会は城西病院でも6年ぶりとのこと。チェリスト奈切敏郎さんを中心に、ヴァイオリンの山中光さんと田村昭博さん、ヴィオラの中川裕美子さんといった一流の演奏家が集結しました。
ベートーヴェンの「管弦四重奏曲 第9番 ハ長調 op.59-3 ラズモフスキー第3番」の後、15分の休憩を経て、シューベルトの「管弦四重奏曲 第14番 ニ短調 D810」が演奏され、満場の喝采の中、「第23回荻窪音楽祭」の第一日目が終了したのです。