特集コラム

Column 3 荻窪名所探訪

2011/04/19

川南遺跡と善福寺川

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JR荻窪駅から南に歩き、善福寺川に架かる春日橋を渡ると杉並区立荻窪地域区民センターがあります。区民センターの前の植え込みに「川南(かわみなみ)遺跡」のプレートが建っているのをご存じでしょうか。区民センターは、環状八号線と善福寺川の真ん中あたりの場所です。

昭和49年(1974)、区民センター建設にともなう発掘調査が行われました。約1メートル地下のローム層から多数の石器が出土。字の「川南」から、「川南遺跡」と名づけられました。区内で発見された最初の縄文時代以前の遺跡です。

「川南遺跡」は、杉並区の中央を流れる善福寺川周辺に広がっています。約1万2千年前(旧石器時代)の遺跡で、その時代にはまだ土器は使われておらず、石器が主要な生活用具でした。「川南遺跡」からは、物を切るための「ナイフ型石器」、木を削るための「掻器(そうき)」、石器をつくるため石をはがした跡である「石核(せきかく)」などが発掘されています。「礫群(れきぐん)」という数十個の集石は、何かを焼いて食べた炉跡と推測されています。

善福寺川は、善福寺公園の善福寺池を水源とします。井の頭公園にある井の頭池から源を発する神田川と平行し、中野区にある丸ノ内線中野富士見町駅付近で神田川と合流します。

善福寺川周辺では、豊富な水源のもと、古くから狩猟・採集生活が営まれていました。善福寺川沿いを歩くと、都内で初めて方形周溝墓が発掘された大宮遺跡、約2万年前の遺物が出土した松ノ木遺跡、川の蛇行によって形成された沖積低地上に集落跡が発見された向山遺跡、弥生時代から古墳時代に稲作が営まれた済美台遺跡など、多くの歴史に出会います。

善福寺川緑地は、現在は都立公園として整備され、春には河畔の桜並木が一斉に花を咲かせます。蛇行する善福寺川沿いを歩けば、丘や、窪地や、勾配や雑木林に覆われていた武蔵野台地をしのぶことができます。

川南遺跡(杉並区立荻窪地域区民センター)
住所:東京都杉並区荻窪2-34-20

文・取材 / 竹内みちまろ

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