特集コラム

Column 3 荻窪名所探訪

2011/03/01

本天沼稲荷神社・蓮華寺

JR荻窪駅から青梅街道を西へ進み、環状八号線と交差する手前で脇に入ると、日大二高へ続く道があります。途中にある稲荷横丁のバス停奥に、本天沼稲荷神社があります。

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お稲荷様の「イナリ」は、五穀豊穣を象徴する「イネナリ・イネニナル」という古語を語源とすると言われています。稲作とともに歩んだ日本の歴史のなかでは、お米が貨幣価値を持っていた時期もありました。

お稲荷様といえば狐の姿を思い浮かべますが、農事の始まる初春から収穫の秋まで人里に出現する狐は、農耕神の眷属と考えられました。

お稲荷様は、商工業が発展した江戸時代には、商業・殖産興業など、幅広い信仰を集めます。農村部にとどまらず、都市部にも稲荷信仰が広まってゆきます。

本天沼稲荷神社の創建時期は定かではありませんが、天沼村字本村の鎮守である「蓮花寺」の過去帳に、慶長19年(1614)の記録があります。また、古文書には、天正年間(1573-1591)にすでに本天沼稲荷神社があったことが記されています。

本天沼稲荷神社には、杉並区指定の有形民俗文化財である「板絵着色・祭礼図」があります。これは、明治の初年に赤坂の山王社から内殿を移築して本殿としたさい、山王祭の光景を描いた大絵馬が奉納されたものです。漆塗りの額は金具で飾られています。半天を着る人々、武士、山車に乗った囃子衆など、山王祭の様子が詳細に描かれています。絵師と額師の名前も残されています。

また、本天沼稲荷神社の近くには、蓮華寺があります。蓮華寺は室町時代の開創と考えられ、本堂には、不動明王坐像と不動明王立像が安置されています。「厄除不動」の名で信仰を集めています。

蓮華寺には天沼村関係の古文書も多く残されています。なかでも、森田家から寄進された文書には、東京府や群区の設置、地租改正の様子などが記され、幕末から明治の時代に天沼村がどのように変わっていったのかを知ることができます。

足を伸ばした周辺には、江戸時代に建てられた地蔵塔や観音供養塔など、民間信仰の石塔も残されています。天沼の歴史に思いをはせながら散策してみてはいかがでしょうか。

本天沼稲荷神社
住所:東京都杉並区本天沼2-14-10
連絡:電話03-3220-7866・FAX03-3220-7866

蓮華寺
住所:東京都杉並区本天沼2-17-8
連絡:電話03-3390-2090

文・取材 / 竹内みちまろ

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