Column 3 荻窪名所探訪
杉並区立公民館跡地
原水爆禁止運動は、世界に広がった市民運動として有名です。その発祥の地が、JR荻窪駅南口からすぐの場所にあります。
1954年に、米国が水爆実験を行いました。遠洋マグロ漁船第五福竜丸の被爆(被曝)報道が、全国を駆け巡りました。その時の様子が、1971年5月18日読売新聞の「日本の人脈(106)」『婦人運動<37>』という記事で紹介されています。
該当個所をまとめると、以下のようでした。
当時、安井田鶴子さんは、公民館でPTAの女性約100名と読書グループ「杉の子」会の活動をしていました。水爆実験に対する怒りと恐怖のなか、杉並の女性たちにより、禁止署名運動をおこそうという声があがりました。区議会が、満場一致で水爆禁止を決議。区民による原水爆禁止署名運動杉並協議会(会長は夫の安井郁さん)がスタートしました。記事では、「私たちも署名簿を持って、一生懸命歩きました。署名運動が珍しい時代だったので、一人の署名をもらうのに、長々と説明したり、番犬にかみつかれたりしながら」という安井田鶴子さんの言葉も紹介されています。
記事からは、安井田鶴子さんが、「杉並の主婦」だけが運動をおこしたような「伝説」を修正している様子がうかがえますが、杉並区では3か月の間に、区民の85パーセントにあたる約28万5千人の署名が集まり、うち約20万人は、女性たちが集めたそうです。第五福竜丸の船員の方が亡くなり、1954年の暮れには、署名数は、全国で二千万を越えました。1955年8月、広島市で、第一回原水爆禁止世界大会が開かれました。
女性たちが、連日、署名を集計した公民館の建物は、老朽化のため現在は残っていませんが、その跡地には、平和への願いが込められた記念碑「オーロラ」(瀧 徹氏作/写真)が建てられています。
公民館跡地周辺には、中央図書館、読書の森公園、荻窪体育館があり、文化・平和都市杉並を象徴する名所の一つになっています。